日本音楽集団
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 2006.1.27.(金) 第182回定期演奏会 新しい音を探るVol.3
◆ モニターレポート ◆

一、アントレラ(もつれ合い)(2004年) ドイナ・ロタル作曲
   (日本音楽集団40周年記念作曲コンクール応募作品より)

〔笙〕真鍋尚之
〔尺八〕米澤浩
〔琵琶〕田原順子
〔二十絃箏〕熊沢栄利子
〔打楽器〕多田恵子
〔指揮〕板倉康明(客演)

二、夕霧が そっと おおったのは…(2004年) 成田和子作曲
   ( 日本音楽集団40周年記念作曲コンクール応募作品より)

〔笛〕竹井誠 〔尺八〕加藤秀和
〔三味線〕山崎千鶴子 〔琵琶〕首藤久美子
〔十三絃箏〕桜井智永 〔二十絃箏〕山田明美
〔打楽器〕仙堂新太郎・望月太喜之丞・盧慶順
〔指揮〕板倉康明(客演)

三、皎月(こうげつ)〜尺八と十三絃のための(1990年) 佐藤聰明作曲

〔尺八〕三橋貴風 〔箏〕吉村七重

四、笙・打楽器と3つの楽器群のための「セレナード第5番」(委嘱・初演) 田村文生作曲

〔笛〕西川浩平 〔笙〕真鍋尚之 〔尺八〕渡辺淳・原郷隆
〔胡弓〕多々良香保里 〔三味線〕穂積大志  〔琵琶〕首藤久美子
〔箏〕I田村法子 II三宅礼子 〔十七絃〕久本桂子
〔打楽器〕望月太喜之丞
〔指揮〕板倉康明(客演)


五、星夢の舞(2002年) 吉松隆作曲

笛〕西川浩平 〔笙〕真鍋尚之 〔篳篥〕西原祐二
〔尺八〕I三橋貴風・竹井誠・阪口夕山 II米澤浩・渡辺淳・原郷隆
〔三味線〕杵家七三 〔琵琶〕田原順子
〔箏〕I吉村七重・久東寿子 II山田明美・渡辺正子
〔二十絃箏〕熊沢栄利子・桜井智永
〔十七絃〕宮越圭子・城ヶ崎美保
〔打楽器〕多田恵子・細谷一郎(助演)
〔指揮〕板倉康明(客演)
   

会場:津田ホール
主催:特定非営利活動法人 日本音楽集団
助成:平成17年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

 

一、ENTRELACS ドイナ・ロタル作曲
「アントレラ」は、私にとって常に精神的に特別な意味に満ちた日本の伝統楽器に対する賞賛と敬意をもって作曲しました。数年前、尺八とバス・フルートのために作曲した「時を越えて」という作品で、私は「現代」と「伝統」と同時に、日本とルーマニアの古典音楽に含まれる伝統的要素の橋渡しを試みましたが、今回の作品「アントレラ(もつれ合い)」では、光から影への進展、また、全音階的なものから半音階的なものへの、そして、無拍節から脈動的なものへの緊張の段階的な変容を創出することが意図されています。(ドイナ・ロタル)

 作曲者のいう「日本とルーマニアの古典音楽に含まれる伝統的要素の橋渡し」の一例は、曲中にも見られる、日本で「落とし」といわれるひとつの音をゆっくりから初めて段々早くする音型と、ルーマニアでの教会の前でまな板のような板をたたいて礼拝に来るよう呼びかける音のリズムの類似性のことを言っている。(吉村七重)

ドイナ・ロタルプロフィール
 1970年〜5年まで、ブカレスト音楽大学で学ぶ。91年にコンポジション―アムステルダム大賞を、94年にマンハイム国際作曲家コンペティションで一等賞を獲得。ルーマニア国内のみならずISCM世界音楽の日々、ウィーン現代フェスティバル等の世界中の音楽祭で演奏されている。また、湯浅譲二監修によるサントリーホールの2001年の国際作曲委嘱シリーズの委嘱を受け交響曲第3番「スピリット・オブ・エレメンツ」が演奏された。現在ブカレスト音楽大学教授。


二、夕霧がそっとおおったのは… 成田和子作曲

“夕霧が そっと おおったのは…”は、西洋の室内楽の形態を7人の邦楽演奏家で試みた7重奏曲である。タイトルにある“夕霧”は源氏物語から?と尋ねられることがある。そのように関連を持たせながら曲を聞いてもらえたら優雅だなあと思う。曲は“夕霧”という言葉が彷彿とさせる情景と心情の描写である。連続して演奏される5つの描写のそれぞれでは楽器の組み合わせに変化を持たせ、ヴィルテュオーソなソロ場面を随所に組み込み、合奏と協奏の対比を試みている。(成田和子)

成田和子(なりた かずこ)プロフィール
パリ国立高等音楽院にて和声科、対位法科、フーガ科、管弦楽法科、作曲科、電子音響音楽作曲科を卒業。マックス・ドイツェ国際作曲コンク?ル(1983)、クセナキス国際作曲コンク?ル(1983)、第17回神奈川芸術祭合唱作曲コンク?ル(1993)、第27回ブールジュ電子音楽と音響芸術国際コンクール(2000)に入賞、第27回武井賞(1985)、第12回文化庁舞台芸術創作奨励賞(1990)などを受賞。近年、ペルピニャン“現在の音楽フェスティバル”、第52回“パブロ・カザルス・フェスティバル”、クレの“フェスティバルFUTURA”などに招聘される。同志社女子大学学芸学部音楽学科助教授、東京音楽大学非常勤講師。

三、皎月  佐藤聰明作曲
月は中国の字書<説文>に「闕(か)くるなり。太陰の精。象形」とあり月(げつ)と闕(けつ)の同声をもって説いているが、国訓「つき」は「憑き」「付き」「尽き」の意がこめられたものであり、古代の日本人がどのように月を感覚しえたかを、偲べるではないか。まさに清玄な大気のなかに、山河に輝沙を置いたかとあやしまれる望月の夜は、今日のように五感の逼塞したわたくしたにすらも、心をあやしく物狂わせる神秘力の放射を感じさせずにはおかない。「皎月」は中村明一の委嘱により、1990年に作曲された尺八と十三絃の曲。また皎月はわたくしの祖父の諡(おくりな)でもある。CDはfontec,focd3189「日月」に収録。(佐藤聰明)

佐藤聰明(さとう そうめい)プロフィール
 1947年生まれ。作曲を独学。近作には、「季節」ニューヨーク・フィル委嘱、「ヴァイオリン協奏曲」サントリー音楽財団委嘱、「呪(しゅ)」バング・オン・ア・キャン委嘱、「SATOH」サンフランシスコ・モダン・バレエ・センター委嘱、「舞」(ハープとオーケストラ)篠崎史子委嘱、「ザ・ラスト・ソング」(バリトンとオーケストラ)ミュータブル・ミュージック・ファンデーション委嘱、「橋U」高橋アキ委嘱などがある。


四、笙・打楽器と3つの楽器群のための「セレナード第5番」 田村文生作曲
舞台中央に配置された笙と打楽器、そしてそれを囲む3つの楽器群(管楽器群、箏群、三味線・琵琶・胡弓)のための音楽。中央から発せられた音がそれぞれの楽器群によって模様・変奏・対比されるプロセスは、次第に作品の中での特有な意味を生成することとなるだろう。しかし同時に、楽器の個性という埋められない溝によって、意味は常に差異化され、変容し、巡る、という儚い宿命も持つ。そんなセレナード。(田村文生)

田村 文生(たむら ふみお)プロフィール
東京藝術大学大学院およびGuildhall School of Music and Drama, London大学院修了。これまでに作品がアジア音楽祭、東京の夏音楽祭、Spitalfields音楽祭、The State of the Nation(ロンドン)、ISCM(香港)、国際現代芸術祭(オデッサ)、Festival Angelica(ボローニャ)等で演奏されているほか、Vallentino Bucchi国際作曲コンクール(ローマ)、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞(日本)、朝日作曲賞、国立劇場作曲コンクール等に入選・入賞。神戸大学発達科学部助教授。1999年より日本音楽集団団員。


五、「星夢の舞」 吉松隆作曲
星から来た「夢の舞楽」の七題。「プレイアデス舞曲集」や「すばるの七ツ」などの〈星のための舞曲シリーズ〉の姉妹作で、旋法(モード)による旋律片と変拍子のリズムによる7つの短い舞曲から成る舞踏組曲である。
 2002年春の初披露(第167回定期)では、北斗の七つ星によせる7つの舞曲として、序之舞(じょのまい)、流々(るる)、喜々(きき)、綺羅々(きらら)、点々(てんてん)、丁々(たうたう)、舞戯之舞(ぶぎのまい)の七曲が並べられ、改訂(2003年、第170回定期)により織音(おりおん)の三つ星によせる3つの舞曲(斗々(とと)、浮流々(ふるる)、旦多(たんた))を加え、全十曲の「一具」となった。今回の定期演奏会では、初演版を演奏する。
 「星夢の舞」はこの後カメラータ・レコードでのセッションレコーディングが予定されており、CDの発売が待たれます。

吉松隆(よしまつ たかし)プロフィール
1953年東京生まれ。交響曲および作品集CD少々あり、賞罰なし。ホームページ:http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/



板倉康明(指揮)プロフィール
1960年東京生まれ、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京藝術大学音楽学部卒業。フランス政府給費留学生として渡仏し、パリ市立音楽院、パリ国立高等音楽院を卒業。音楽全般を故アンリエット・ピュイグ-ロジェ氏に師事。指揮者として活発に活動し、サントリーサマーフェスティヴァル、アジア音楽週間2000、スペインのアリカンテ音楽祭、コンポージアム2003、シュライヤーン音楽祭等、国内外を問わず、特に現代音楽の分野において、その、精緻で理知的な解釈が作曲家、批評家達より好評を受けている。
現在、東京シンフォニエッタ音楽監督。中島健蔵賞、第66回、68回日本音楽コンクール委員会特別賞を受賞。

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